
杏仁豆腐はデザート?それとも薬膳?
杏仁豆腐と聞けば、つるりとした白いデザートを思い浮かべる方が多いでしょう。中華料理の締めくくりに登場する、甘くてやさしい味わい。しかしそのルーツを辿ると、杏仁豆腐は「薬膳」として生まれたもの。咳止めや喘息の治療のための食べ物だったのです。
薬膳とは、薬ではありません。だからこそ「おいしく食べられること」が大切。苦味や渋みを持つ素材を、工夫して美味に仕立てる──それが薬膳の知恵です。杏仁豆腐もその一例。苦味のある杏仁(きょうにん)を、豆腐のようにやさしく包み込むことで、身体にすっと馴染む一品となりました。
最近では、スーパーやコンビニでも手軽に杏仁豆腐を手に入れることができます。けれど、その中には本来の杏仁を使わず、アーモンドエッセンスや香料だけで香りづけされたものも少なくありません。見た目は似ていても、薬膳としての杏仁豆腐とは異なるもの。身体に寄り添う効能や、素材の背景を知ることで、選び方も変わってくるかもしれません。
杏仁の効能
杏仁はアンズの種。漢方では、「あんにん」ではなく「きょうにん」と読みます。生薬としての杏仁は、咳や喘息、便秘の処方に欠かせない存在。
杏仁には、咳を鎮める「鎮咳作用」と、腸を潤す「潤腸作用」があるとされます。
杏仁の含まれる漢方処方
- 麻黄湯(まおうとう),麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう):感冒時の咳や痰,喘息を改善する漢方。
- 麻子仁丸(ましにんがん),潤腸湯(じゅんちょうとう):便秘に用いる漢方。杏仁は脂肪油を多く含むことから腸の乾燥による便秘を改善する作用がある。
乾燥しがちな秋、肺が弱りやすい季節にぴったりの食材です。とくに、朝晩の空気が冷たくなり、喉がイガイガし始める頃──そんなとき、杏仁豆腐は静かに身体を助けてくれるでしょう。
南杏仁と北杏仁の違い
ところで、杏仁には「南杏仁(甜杏仁)」と「北杏仁(苦杏仁)」があります。植物としては同じアンズの種子ですが、含まれる成分が異なります。南杏仁は甘味があり、主に食用に。北杏仁は苦味が強く、薬用に使われることが多いです。杏仁豆腐には、主に南杏仁が使われますが、味に深みを出すために北杏仁を混ぜて使われることもあります。
アミグダリン――毒と薬の境界
杏仁に含まれる成分のひとつに「アミグダリン」があります。これは、体内で分解されると微量の青酸を生じるため、毒性があるとされる一方、呼吸中枢を刺激する作用があり、喘息や咳などに有効です。毒と薬は紙一重ともいいます。もちろん、杏仁豆腐に使われる杏仁は、適切な処理が施されており、安全に食べられるようになっています。
秋の養生と杏仁豆腐
秋は「肺」の季節。乾燥に弱い肺を潤すには、水分をとるだけでなく、肺を潤す食材が必要です。また秋は、寒暖差も激しくなるため、自律神経の乱れから腸の働きが低下して便秘にもなりやすい時期。腸を潤し便通を良くするのにも杏仁は一役買ってくれます。
薬膳は、身体との対話です。「おいしい」と感じることは、身体が「受け入れている」というサイン。杏仁豆腐を食べる時間が、ふっと自分をいたわるひとときになりますように。
【肺】と秋の養生 ― 五行論から読み解く、やさしい漢方理論と薬膳セルフケア
五行論とは―――やさしく解説!「心と体のケア、薬膳の食材選びに役立つ東洋の知恵」
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