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コラム 薬膳料理教室

【腎】と冬の養生ー五行論から読み解く、やさしい漢方理論と薬膳セルフケア

冬の空気はどこか深く静かで、ひんやりと身体の奥まで届いてきます。
気温がぐっと下がる日が続くと、肩や腰がこわばったり、朝起きるのがつらくなったり、むくみや冷えが気になったり…。
そんな小さなサインが積み重なって、くしゃみひとつでぎっくり腰になってしまう方もいます。


冬は自然界がエネルギーを内側へ「しまい込む」季節。
私たちの身体も同じように深いところで温め、蓄えようとしますが、冷えや疲れが重なると、その“土台”である腎が揺らぎ、腰や関節、気力にまで影響が出てきます。


東洋医学では、冬は「水」、そして対応する臓は「腎」。
腎は生命エネルギーの源ともいわれ、冷えやストレスの影響を受けやすい場所です。
だからこそ、冬の入り口には腎をやさしく守る養生が大切になってくるのです。

✦ 五行論で見る「冬」と「腎」

冬は五行論では「水」に属し、この季節にもっとも働きが高まる臓が「腎」です。
東洋医学でいう腎は、西洋医学の“腎臓”よりもずっと広い意味を持ち、生命エネルギーの源を蓄える場所と考えられています。

腎は、私たちの身体の“いちばん深いところ”を支える存在で、次のような働きを担っています。

  • 成長・発育・老化をつかさどる(生命力の根っこ)
  • 水分代謝を調える(むくみ・排尿・体内の水の巡り)
  • 骨や歯の強さを支える
  • 耳や聴力とつながる
  • 髪のつや・黒さを保つ

つまり腎は、目に見えない“基礎体力”や“根っこの力”を静かに支えてくれる臓。
冬はその腎がもっとも働く季節であり、同時に冷えや疲れによって弱りやすい季節でもあります。

「冬」は「腎の季節」とはどういうこと?五行論について解説した記事はこちら

 

✦ 腎の働きと五行のつながり

 

項目 腎との対応
五行
六腑 膀胱(五臓に対応する腑)
五官 耳(五臓とつながる感覚器)
五主 骨・髪(五臓のつかさどる器官)
五季 冬(五臓が属する季節)
五味 鹹味(塩味)(変調したときに好む味)
五志 恐れ・不安(変調したときの感情)

腎(水)は、秋の肺(金)から生み出される存在。
秋にしっかり「収め」、冬に「蓄える」という自然の流れが整っていると、腎は静かに力を養い、春の芽吹きへとつながっていきます。

 

✦ 腎と他の臓腑との関係(相生・相克)

五行論では、臓腑は互いに影響し合い、バランスを保ちながら身体の調和を支えています。腎は「水」の性質を持ち、他の五行の臓腑と「相生(助け合い)」や「相克(抑制し合い)」の関係を持っています。

相生(助け合い)の関係

腎(水)➡肝(木)➡心(火):腎は肝を生み出す。肝はまた心を生みます。

これは、腎が肝の成長や働きを支え、肝が心の活力を促すという自然の循環を示しています。腎がしっかりと力を蓄えることで、肝や心も健やかに働くことができます。

相克(抑制し合い)の関係

①腎(水)➡心(火):腎は心を抑える

水が火を消すように、
腎(水)は心(火)の過剰な熱を抑える役割を持っています。
腎が弱ると、心の火を抑えられなくなり、
不安・焦り・睡眠の質の低下
が出やすくなります。

② 脾(土)➡腎(水)

土が水をせき止めるように、
脾(土)は腎(水)の働きをコントロールする側です。
冬は冷えで脾が弱りやすく、
その影響が腎に波及して
むくみ・頻尿・下半身の冷え・腰痛
が出やすくなります。

 

 

✦ 『黄帝内経』に見る冬の養生

東洋医学の古典『黄帝内経』では、冬は「蔵(ぞう)=しまい込む」季節とされています。
自然界が静かに動きを止め、エネルギーを地中にしまい込むように、私たちの身体もまた、外へ向かう力を弱め、内側にエネルギーを蓄えることが求められる時期です。

● 冬は「蔵(しまう)」の季節

木々が葉を落とし、動物たちが冬眠に入るように、自然界はすべての活動を最小限にして“守り”に入ります。
この「蔵」の働きがうまくいくと、春に向けてしっかりと力を蓄えることができます。

身体も同じで、冬に無理をしてエネルギーを消耗すると、春に疲れが出たり、体調を崩しやすくなったりします。
だからこそ、冬は「がんばる季節」ではなく、「守る季節」なのです。

● 早寝遅起き、静かに過ごす

『黄帝内経』には、冬の過ごし方として
「早く寝て、ゆっくり起きる」
と書かれています。

夜はしっかり眠り、朝は急いで動き出さず、身体が温まるのを待ってから活動する。
これは腎のエネルギーを守るための、とても理にかなった養生です。

また、冬は気持ちも外へ向けすぎず、静かに、落ち着いて過ごすことが大切とされています。
心がざわつくと腎が消耗しやすくなるため、ゆっくり呼吸をしたり、温かいお茶を飲んだり、穏やかな時間を意識的につくることが冬の養生になります。

 

✦ 冬の養生のポイント

冬は、自然界が静かに動きを止め、エネルギーを内側へと蓄える季節。
私たちの身体も同じように“守る力”を大切にすることで、腎をやさしく支えることができます。

① とにかく「温める」

冬の冷えは、腎のエネルギーをもっとも消耗させる要因のひとつ。
身体の深い部分を温めることが、冬の養生の基本になります。

  • 腰(腎のある場所)を冷やさない
  • お腹・足首・手首を温める
  • 湯船につかる、足湯をする
  • 温かい飲み物をゆっくり飲む

「冷えを入れない」「温かさを逃がさない」
この二つを意識するだけで、腎の負担がぐっと軽くなります。

② 無理をしない、頑張りすぎない

冬は「蔵(しまう)」の季節。
外へ向かうエネルギーを使いすぎると、腎精が消耗してしまいます。

  • 夜更かしを避ける
  • 過度な運動で汗をかきすぎない
  • スケジュールを詰め込みすぎない
  • 心を静かに保つ時間をつくる

「がんばる」よりも「守る」ことが大切。
冬にしっかり休むことは、春の元気を育てるための準備でもあります。

③ ゆっくり、静かに、内側にエネルギーを蓄える

冬は、心も身体も“内向き”が自然な季節。
外へ広がるより、内側に落ち着くことが腎を守る養生になります。

  • 深い呼吸を意識する
  • ゆっくり歩く、ゆっくり動く
  • 温かいものを丁寧に味わう
  • 静かな時間を大切にする

忙しさの中でも、ふっと立ち止まる瞬間をつくるだけで、腎がほっとします。

④ 腎を養う食材を取り入れる

冬は、黒い食材や温める食材が腎を支えてくれます。

  • 黒豆、黒ごま、黒きくらげ、昆布、ひじき
  • 山芋、くるみ、栗、黒米、枸杞子
  • 生姜、ねぎ、にんにく、シナモン
  • 羊肉、鶏肉などの温性の食材

「温める」「補う」「巡らせる」
この三つを意識した食材選びが、冬の薬膳のポイントです。

 

✦ 腎を養う食材(薬膳)の考え方

冬は腎がもっとも働く季節であり、同時に冷えや疲れで弱りやすい季節。
腎を支える食材には、「黒い色・温める力・補う力・塩味(鹹味)」という特徴がよく見られます。
これは五行論で、腎(水)が「黒」「鹹味」と深く結びついていることとも関係しています。

ここでは、それぞれのグループをわかりやすく解説します。

① 黒い食材 ― 腎のエネルギーを“補う”

黒い食材は、腎のエネルギー(腎精)を養うとされ“補う”冬の養生に欠かせない存在です。

  • 黒豆

腎を補い、血を養い、疲れやすさや冷えにやさしく働きかけます。
むくみの改善にも役立ち、冬の「水の巡り」のサポートに。

  • 黒ごま

髪・骨・肌を支える腎の働きを助ける食材。
白髪が気になるときや、乾燥による便秘にもよいとされます。

  • 黒きくらげ

潤いを与えながら腎を補う、冬にうれしい食材。
血の巡りを整える働きもあり、冷えによる肩こりや頭痛にも。

  • 昆布・ひじき

ミネラルが豊富で、腎の“水の巡り”を整える食材。
むくみや疲れやすさが気になるときに。

黒い食材は、冬の「補腎(ほじん)」の基本です。

② 温める食材 ― 冷えから腎を守る

腎は冷えに弱い臓。
身体を温める食材は、腎の働きを守り、冬の不調を防ぐ力になります。

  • 生姜

身体の中心から温め、冷えによる痛みやむくみを和らげます。
腎のある腰まわりの冷えにも効果的。

  • ねぎ

気の巡りをよくし、身体を温める力が強い食材。
風邪のひき始めにもよく使われます。

  • にんにく

強い温め作用で、冷えによる疲れやだるさをサポート。
腎のエネルギーが弱っているときの“底上げ”にも。

  • 羊肉

身体を深部から温める力が強く、冬の薬膳では代表的な温補食材。
冷え性や疲れやすさが気になるときに。

  • シナモン(桂皮)

体を温め、冷えによる痛みや風邪にも使われる食材。
冬のスープやお茶に少量加えると、身体がふっと緩みます。

③ 腎を“補う”食材 ― 生命力の根っこを支える

腎精を補い、身体の深い部分を養う食材です。
冬に積極的に取り入れると、春の元気につながります。

  • 山芋(山薬)

腎と脾(消化)を同時に補う優秀な食材。
疲れやすい、気力が出ない、胃腸が弱いときに。

  • くるみ

腎を温め、腰痛や冷え、便秘にやさしく働きかけます。
冬の間食にもぴったり。

  • 黒米

腎を補い、血を養う力があり、冬のごはんに混ぜて養生に。

  • 枸杞子(クコの実)

腎と肝を補い、目の疲れや乾燥にもよいとされます。
スープやお粥に数粒加えるだけで、冬の薬膳らしい深みが出ます。

④ 冬におすすめの味=「鹹味(かんみ/塩味)」

五行論では、腎(水)に対応する味が「鹹味(塩味)」。
鹹味には、

  • 水分代謝を整える
  • 腎の働きを助ける
  • 身体を柔らかくする
    といった作用があるとされます。

ただし、取りすぎには注意

鹹味は腎を助ける一方で、過剰な塩分は腎に負担をかけることもあります。
薬膳でいう「鹹味」は、

  • 海藻類
  • 貝類
  • 発酵食品
    など、自然な塩味を含む食材を指すことが多く、
    “しょっぱいものをたくさん食べる”という意味ではありません。

ちょうどよい塩味が腎を助ける

  • 昆布だし
  • 味噌
  • 魚介の旨味
  • 海藻のミネラル
    こうした「自然の鹹味」を上手に使うと、腎がやさしく整います。

✦ まとめ

冬は「温める」「補う」「黒い色」「自然な塩味」がキーワード。
これらの食材を少しずつ日々の食事に取り入れることで、腎が整い、春の元気につながっていきます。

冬は、がんばるよりも、やさしく自分を温める季節。
あたたかい飲み物をひと口、深呼吸をひとつ、湯船にゆっくり浸かる時間。
そんな小さなぬくもりが、腎を守り、心までほぐしてくれます。

薬膳をもっと気軽に試してみたい方は、氣生薬局の薬膳料理教室にもぜひいらしてください。
季節の食材選びや、暮らしに取り入れやすい養生を一緒に学べる時間をご用意しています。

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