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秋の乾燥とゆらぎに寄り添うセルフケア
最近の秋は、昔のように静かに訪れるというより、ちょっと気まぐれな印象があります。昼と夜の気温差が大きかったり、急に暑さが戻ったりして、空気は澄んでいるのに、どこか落ち着かない。そんな季節の揺らぎを、私たちの身体もちゃんと感じ取っていて、呼吸や肌、気分にまで影響が出てくることがあります。
五行論では、秋は「金」に属し、対応する臓は「肺」。秋は五臓のうち、肺の機能が盛んになる季節です。肺は呼吸をつかさどるだけでなく、皮膚や鼻、腸、そして感情とも深くつながっていて、外の世界との境界を守る役割もあります。
とくにこの時期は、乾燥や気温の急な変化で肺の潤いが奪われやすく、咳や鼻づまり、肌荒れ、便秘、自律神経の乱れによるアレルギー症状などが出やすくなります。だからこそ、秋の入り口には「呼吸を整えること」や「潤いを守ること」などちょっとしたセルフケアが大事になってくるのかもしれません。
あなたの秋のセルフケア、どんなふうに始めてみましょうか?
「秋」は「肺の季節」とはどういうこと?五行論について解説した記事👇
五行論とは―――やさしく解説!「心と体のケア、薬膳の食材選びに役立つ東洋の知恵」

肺の働きと五行のつながり
肺は「宣発(気を外へ広げる)」と「粛降(気を下へ降ろす)」の働きを持ち、呼吸、水分代謝、皮膚の防衛に関与します。五行論では、以下のような対応関係があります:
| 項目 | 肺との対応 |
| 五行 | 金 |
| 六腑 | 大腸(五臓に対応する腑) |
| 五官 | 鼻(五臓とつながる感覚器) |
| 五主 | 皮毛(五臓のつかさどる器官) |
| 五季 | 秋(五臓が属する季節) |
| 五味 | 辛味(変調したときに好む味) |
| 五志 | 悲しみ・憂い(変調したときの感情) |
肺と関係の深いことがらと不調
肺と他の臓腑との関係:五行の母・子・制御
五行論では、臓腑同士が「生み、支え、抑える」という関係性を持っています。肺(金)を中心に見てみると、こんなつながりが見えてきます:
-
相生の関係
- 【母】脾(土)→【子】肺(金)=脾は肺の母
→ 消化吸収が肺の気を支える - 【母】肺(金)→【子】腎(水)=肺は腎の母
→ 呼吸が腎の精を補う
- 【母】脾(土)→【子】肺(金)=脾は肺の母
-
相克の関係
- 肺(金)→肝(木)=金は木を抑える
→ 呼吸が情緒の高ぶりを鎮める
- 肺(金)→肝(木)=金は木を抑える
この関係性を踏まえると、肺の不調は脾・腎・肝にも波及しやすく、全体のバランスを見ながらケアすることが大切です。
秋の不調:乾燥・便秘・アレルギー・自律神経の乱れ
秋の乾燥は、肺と大腸の潤いを奪い、以下のような不調を引き起こします:
- 空咳、喉のイガイガ、鼻づまり
- 皮膚の乾燥、かゆみ、吹き出物
- 便秘(肺と大腸の表裏関係)
- 花粉・ダニ・カビによるアレルギー症状
- 気温差による自律神経の乱れ、睡眠の質の低下
秋の養生
秋は、空気が澄んで気持ちのいい季節ですが、乾燥が強くなることで、身体には少し負担がかかる時期でもあります。とくに「肺」は潤いを好み、乾燥を嫌う性質があるため、咳や鼻づまり、肌のかさつき、便秘などが起こりやすくなります。 東洋医学では、こうした乾燥の邪気を「燥邪(そうじゃ)」と呼び、秋から冬にかけて現れやすいものとされています。肺は呼吸だけでなく、皮膚や鼻、腸、そして感情とも深くつながっているため、乾燥の影響は思った以上に広く、心身にあらわれます。
📜 『黄帝内経』に見る秋の養生
古典『黄帝内経・素問』には、秋は「収斂(しゅうれん)」の季節と記されています。自然界のすべてが静かに内へと収まり、成熟していく時期。この季節には、鶏のように早寝早起きを心がけ、夕方には活動を控え、心を穏やかに保つことが大切だと説かれています。
感情を外に向けすぎず、内側に静かに収めることで、肺の気を清らかに保つことができるのです。こうした養生に背くと、肺が傷つき、冬には消化不良や下痢などの不調を招くとも言われています。
だからこそ、秋は「潤い」と「静けさ」を意識して過ごすことが、冬へのやさしい準備になるのかもしれません。
肺を潤す食材
肺と腸の潤いを保つために、以下の食材が役立ちます:
| 食材 | 働き |
| 梨 | 潤肺・止咳 |
| 白きくらげ | 潤肺・美肌 |
| れんこん | 清熱・止血・潤肺 |
| 山芋 | 補気・潤肺・健脾 |
| 黒ごま | 潤腸・補腎 |
| はちみつ | 生津・潤肺・緩和作用 |
| ねぎ・生姜 | 辛味で肺気を発散 |
薬膳料理教室では、こうした背景も少しずつ紹介しながら、日々の食事が「自分をいたわる時間」になるようにお手伝いしています。
薬膳料理教室とつながる日々のケア
これらの養生の知恵は、料理にも活かすことができます。たとえば、肺を潤す食材(白きくらげ、梨、百合根、れんこんなど)を使った薬膳は、季節の変わり目にやさしく寄り添ってくれます。この記事が、薬膳料理教室での学びを、日々の暮らしにそっとつなぐ橋になれたら嬉しいです。
次回の薬膳料理教室では、
「秋の食材をたっぷり使って、体も心もぽかぽかに。ぐっすり眠れる体づくり」
をテーマに、
秋の養生五色ごはんとポカポカ薬膳スープをご紹介します。
第9回薬膳料理教室のお知らせ~2025年11月12日(水)池袋
どうぞお楽しみに。







