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【脾】と梅雨の養生 ― 五行論から読み解く、やさしい漢方理論と薬膳セルフケア

じとじと、ジメジメと湿気の多い梅雨。気圧の変化が激しく、空気に湿り気が増えてくるこの時期は、体の中にも余分な水分がたまりやすく、重だるさやむくみを感じやすくなります。

東洋医学では、梅雨は「長夏」や「土用」と呼ばれ、五行論では「土」に属する季節。対応する臓は「脾」で、もっとも湿邪の影響を受けやすい臓でもあります。

この記事では、脾のはたらきと五行とのつながり、梅雨に起こりやすい不調、そして日々の暮らしでできる養生について、やさしく解説していきます。

 

脾のはたらきと五行のつながり

脾は、飲食物を消化・吸収し、体に必要な「気・血・水」へと変える大切な臓です。また、血液が脈の外へ漏れ出すのを防ぎ、臓腑が本来の位置にとどまるよう支える働きも担っています。私たちのエネルギーの源をつくり、体の土台を整える役割をもつ臓といえます。

五行論では、脾は「土」に属し、以下のような対応関係があります。

 

脾との対応
五行
六腑 胃(脾と表裏の関係にある腑)
五官 口唇(脾とつながる感覚器)
五主 肌肉(脾がつかさどる器官)
五季 土用・長夏(脾がもっとも働く季節)
五味 甘味(脾が弱ると欲しやすい味)
五志 思(考えすぎ・悩みすぎで脾が疲れる)

脾は湿を嫌う性質があり、梅雨のように湿気が多い季節はとくに負担がかかりやすくなります。だからこそ、この時期は脾をいたわる養生が大切になってきます。

 

【薬膳×東洋医学】五行論とは?心と体のバランスを整える食材と体質ケアをやさしく解説

 

脾と他の臓腑との関係:五行の母・子・制御

五行論では、臓腑同士が「生み、支え、抑える」という関係性を持っています。脾(土)を中心に見てみると、次のようなつながりが見えてきます。

■ 相生の関係(母が子を養う)

【母】心(火)→【子】脾(土)=心は脾の母
火が燃えると灰や土を生じるように、心の働きが整い血液が十分に巡っている状態は、脾の消化吸収の力を支え、体のエネルギーをつくる土台になります。
【母】脾(土)→【子】肺(金)=脾は肺の母
鉱石が土の中から生まれるように、脾の消化吸収がしっかりしていることで肺の気が養われ、呼吸や免疫の力が保たれます。

■ 相克の関係(抑えて調和を保つ)

脾(土)→腎(水)=土は水を抑える
大地(土)が水の流れをせき止めて形を与えるように、脾がしっかり働いていると、水分代謝が整う。

脾の状態は肺・心・腎にも影響しやすく、梅雨の湿気で脾が弱ると全身のバランスが崩れやすくなります。だからこそ、この季節は脾を中心に体全体を整える養生が大切になります。

【肺】と秋の養生 ― 五行論から読み解く、やさしい漢方理論と薬膳セルフケア

【腎】と冬の養生ー五行論から読み解く、やさしい漢方理論と薬膳セルフケア

 

梅雨に起こりやすい不調:湿邪による重だるさの正体

梅雨の時期は湿度が高く、体の中にも余分な水分がたまりやすくなります。東洋医学では、この湿気の邪気を「湿邪」と呼び、脾の働きを弱めることでさまざまな不調を引き起こします。とくに次のような症状が出やすくなります。

 

  • 身体が重い、だるい
  • 胃もたれ、食欲不振、下痢・軟便
  • むくみ、手足の冷え
  • 頭が重い、集中力の低下
  • めまい、耳鳴り
  • 強い眠気
  • 気分の落ち込み、やる気が出ない
  • 関節の痛み
  • 肌のべたつき、吹き出物、口内炎

これらは、湿が体内に停滞し、脾の「運化(消化・吸収・水分代謝)」の働きが弱っているサインです。余分な水分が体の中にたまる状態を、東洋医学では「水滞(すいたい)」と呼びます。水滞が進むほど、重だるさやむくみ、消化器の不調が強くあらわれやすくなります。

 

梅雨の養生:脾を整え、湿をさばく暮らし方

梅雨の湿気は脾の働きを弱めやすく、重だるさやむくみ、消化器の不調につながります。この季節は、脾をいたわりながら体内の湿をさばく暮らし方を意識することが大切です。

① 生活のポイント

  • 軽いウォーキングやジョギング、半身浴などで気血を巡らせ、適度に汗をかく
  • 冷たい飲み物や生ものを控え、脾を冷やさないようにする
  • 味の濃い料理、甘いもの、アルコールは湿を生みやすいため控えめに
  • 足や腰を冷やさず、下半身を温める
  • 室内の湿気をためないよう、除湿や換気をこまめに行う
  • だらだら考えすぎない(五志=「思」が過度になると脾を傷める)
  • 胃腸を休ませるために腹八分目を心がけ、必要に応じて軽いファスティングも取り入れる

脾は「湿」と「冷え」に弱い臓です。体を温めて巡りを良くし、余分な湿をため込まない生活が、梅雨の不調をやわらげてくれます。

 

② 食材のポイント(脾を整える・湿をさばく)

梅雨の時期は、利尿作用があり水の巡りを良くする食材、そして脾の働きを助ける食材を意識すると、体が軽く整いやすくなります。

  • ウリ科の野菜(きゅうり、メロン、すいか) 体の熱を冷まし、余分な水分を排出する
  • トマト 水分代謝を助け、むくみを軽減
  • キャベツ 胃腸の働きを助け、脾をサポート
  • 豆類(枝豆、小豆、大豆、黒豆) 気を補いながら湿をさばく、梅雨の代表的な健脾食材
  • とうもろこし 利水作用があり、ひげや芯まで使うとさらに効果的
  • はとむぎ 余分な湿を取り除き、美肌にも役立つ

これらの食材は、脾の負担を軽くし、体内の湿を外へと巡らせる力を高めてくれます。温かい汁物や蒸し料理など、消化にやさしい調理法と組み合わせるとさらに効果的です。

 

まとめ

薬膳は、「毎日の食事そのものが体を整える力を持っている」という考え方に基づく食養生です。体質や季節の変化に合わせて食材を選び、無理なく続けられる形で心身のバランスを整えていきます。

 

とくに梅雨の時期に大切になるのが、脾(ひ)のケアです。脾は飲食物を消化吸収し、体に必要なエネルギーをつくる臓で、水分代謝や集中力、気力とも深く関わっています。湿気が多い季節は脾が疲れやすく、重だるさやむくみ、胃腸の不調があらわれやすくなるため、脾をいたわる食材や調理法が心身の安定につながります。

薬膳は特別なものではなく、日々の食卓に気軽に取り入れられるのが良いところ。今日の体調に合わせて食材を選ぶだけでも、ゆらぎやすい季節を心地よく過ごす助けになります。

 

もっと深く学びたい方には、薬膳料理教室も開催しています。初めての方でもわかりやすくやさしく解説しています。
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